蜘蛛の女神、セントールとの生活、飛ぶ事が容易くない翼人、竜を飼育するの事

というと何かドラゴンパス辺りの日常っぽいですが、九井諒子の商業デビュー作「竜の学校は山の上」に収録作の後半4つの内容。まぁ、ハイじゃなくてローな感じですが。
この本、WEB漫画と同人誌からの再録で、商業誌での掲載経験はないっぽい。どういう経緯かは知らないが、これ通した編集者は英断ですな。世の中まだまだ凄い人が埋もれてるもんだ。

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

竜の学校は山の上 九井諒子作品集


上記の4つ以外は、まおゆうみたいなポストドラクエ的な勇者/魔王ものが4編(と、ごく短いのが後2つ)。
何だか知らないが、どうもこの人の中では魔王が倒されるとその後漏れなく人間たちは合い争うというイヤな世界観になってるぽい。
そんなわけで、こんな勇者さまも


こー、飲んだくれてやさぐれていくような。基本的にそんな無粋方向にリアリティを加えてみましたみたいな展開。

でもまあ、壷漁りはやめとけ。
前2本は明白なバッドエンドなのに対して、後ろ二つは些かの希望を見出すような終わり方をしてます。同じ展開に飽きたのか、その先を見たくなったのか、何か心境の変化があったのやら


まぁ、勇者話以外の他のも基本的に

こんなところに注目したりだったり



風の仔の《飛行》技能が30%だった事を思い出すような話とか、



ああ、うん、起きてる竜が食物連鎖が成り立たないほどやたら高コストな筈なのは俺も昔から気にかかってたよ。みたいな、基本的にドリーム分の足りないイヤなリアリティーが逆にセンス・オブ・ワンダーになる芸風にドキドキものです。
とりあえず、オーランシーならマスト買い。
最後の竜の学校の話は、読んでてちょっと掘骨砕三の食用恐竜からハムを作る話を思い出した。

クロとマルコ (ヤングチャンピオン烈コミックス)

クロとマルコ (ヤングチャンピオン烈コミックス)


個人的に凄いと思ったコマがここ

こんな顔で希望について語られたらどうしろと。
まぁ、こういうシーンなら普通は健気にも笑ってみせるコマを描きそうなもんだが、まったく表情を作れてないのは、真実ギリギリのところからものを言っているのだと伝わるのです。


あとはこことか

間の取り方がうまいというか、他のシーンをみれば背景が描けない人のわけは無いのですが、ときおりゴスッと抜いた白い空間が出てくるのは、描くべきところと抜くべきところを完全にコントロールできてる人なんだろうなあ。と
WEBからの再録分は今でも公開中(本の方は加筆されてますが)なので、まずはそちらからでも
http://nisiniha.sakura.ne.jp/

単行本収録作の中では土地神の婿取りの話の、『代官山の嫁探し』が一番好きかな。