パリ(Paris)とはイスの都にも匹敵する(Par-Is)の意である


Wikipedia先生は『え?ソレ、ガセだから』って言ってるけどね!

ブルターニュという土地は、名前からわかるようにフランスでありながら英国的な文化が色濃い土地である。英国/ブリテン的というよりケルト的というべきか。まぁ、そもそも百年戦争でナニするまで、土地の人間に国家への帰属意識だとか愛国心といった概念自体がなかった。とかも聞きますが。

で、イスとはかつてそのブルターニュにあって、こー、ペイガニックな享楽っぷり(と海賊行為)で栄華を極めた都市だったんだけど、海抜0m都市という死亡フラグビンビンさとアンチクライストな素行がたたられて水没し(色ボケたビッチのせいで自滅しただけとも言う)、今なお呪われたままに海底にその姿と住人を残しているという。そんな話。

ビッチの名はダユー。破滅を予言したキリスト教の坊さんはコランタンである。


コランタン号の航海 ─ 水底の子供 (1) (ウィングス・コミックス)というわけでコランタン号の航海(山田睦月/大木えりか)である。
件の聖人の名を冠された曰く付の幽霊船...違った、幽霊憑き船、HMSコランタン。異郷の存在をアレした坊さんの名前がついてるのに、寧ろ目の敵にされるのかやたら彼岸の住人を引き寄せるのやらで英国海軍省が公には出せないアッチ系の任務を任される事もしばし。こちらの全2巻では、要人救出の為にフランスへ向かうコランタンの航海を新任海尉の目を通して描く。

と、まぁ、ブルターニュ伝説+海洋冒険物という何か鯖カレー缶並のエッジな食い合わせを、何故か少女マンガ誌でやってるわけである。
森薫を指してよく、舞台設定のチョイスが女とは思えない。みたいな言い方をされますが、この二人も相当なモンである。何かコレの前はデコトラ物だったらしいし。イヤ、デコトラて!
何というか、怪奇系(サスペリアとか)でもない温〜い感じの少女漫画絵なので怪異の部分の描写が、凄いことが起きている気が全くしないのは、こー、殺伐としてなくて良い部分と思っておくべきなのか。人死にが出てても不思議ではない規模の砲戦でも、手足がもげたりとかそういう描写はなし。冒頭、脳手術シーンで見る者をドン引きさせたマスター&コマンダーと違って、安心ゝゝ。海兵隊長がお婆ちゃんのお札をポイしてファイヤーウォールかました時はさすがにどうかと思いましたが。
対して海軍生活の部分の描写はなかなか。メシが不味くて、プライバシーが無くて、空気が悪くて、なんか楽しそう!なんである。幕間のおまけページもイチイチ濃ゆいよ!

元々、スティーブン・ビースティの輪切り図鑑の帆船のを買ったらamazonで勧められたんだけど、そちらと併読するとニヤニヤできていい感じです。輪切り図鑑はヴィクトリー級相当って事なんで、規模は桁違いですが。

続編のロンドン・ヴィジョナリーズではコランタン号は傾船修理中でもっぱらロンドンを舞台にしたシティアドもの。今回のネタはロンドン橋とレディ・リーという事ですが、既刊の1巻は、まぁ、とりあえず舞台説明に費やした感じ。フランス公安の子飼いの陰の組織(w が、特殊な少年マンガみたいな無茶な衝き抜け方してくれるわけでもない分、流石に陳腐に見えなくもないですが。
市場の生活感とかそういった部分は相変わらずいい感じです。ロンドン橋上の住居が撤去済みだったのは少々残念。

そろそろ二巻がでる筈なのでそちらに期待。